日本国際法律家協会は人権,民主主義,平和,環境などを通して法律家の国際的な連帯を求める活動を行なっています。
 
 
 


国連人権活動:ジュネーブからの報告ー第1回人権理事会

 昨年までの国連人権委員会に変わって発足した人権理事会の第1回会議が、6月19日から6月30日までジュネーブ国連本部で開催された。
 全期間ジュネーブに滞在した協会理事の塩川頼男氏から、「ジュネーブからの報告」として人権理事会の進行状況が16回にわたり送られてきたので、ご紹介する。
  また、6月26日には憲法9条についての塩川氏の発言もあった。


ジュネーブからの報告

理事:塩 川 頼 男

1.第1回人権理事会の特徴

 第1回人権理事会と特別会期の人権理事会を経験した上で、今後を展望したとき、かなり特徴が出ていたと思います。今までやってきたことは基本的に全部引き継がれ、その上でだんだん中味も、やり方も人権理事会流に変えられるだろうと思います。その中で大きく変わることの一つはNGOの位置付けではないかと思います。人権理事会が総会に近い関係になるとともに、NGOと遠くなる傾向が出るのではないかと思います。その点をNGOは注視して対応していかなければならないと思います。特別会期の中で特徴的なことがありました。2日間の会議でNGOの発言は許されませんでした。発言登録したところは、extranet に公開されるということにされました。公開されたのを見たら、私が出したIADLを含め五つだけでした。決議案に賛成だから発言の必要がないのでしょうか。extranetで公開されるだけでは効果がないから出さないのでしょうか。はじめはジョイント発言の打ち合わせの声もありましたが、そのうち聞こえなくなりました。NGO自身が変わっていくのではないでしょうか。また人権理事会の回数が増え、緊急の会議も行われるようになり、だんだん常時的対応を求められるようになるのではないでしょうか。そのように考えると、ジュネーブ、ニューヨーク、本部の間の連携、迅速で、正確な情報収集と伝達、分析、政策化、他のNGOとの共同、共闘などに取り組める組織的、人事的配置ができるNGOが発展してゆくように思います。IADLに即していえば、バッジ取得にこれだけ多くの時間と労力を費やしていては、上記のような積極的取り組みは難しいと思います。もっと、実情に合った仕事ができるようにすべきです。少なくとも、今回多くの人に公開されたメール上でバッジ申請の進み方が演じられたわけですから、改善しやすいと思います。私は今回、この「ジュネーブからの報告」を含め、メールのやり取りを切り張りして整理し、報告書を作ったところ30ページになり、貴重な資料となりました。私は15年のジュネーブでの活動経験から、今IADLの出番、老舗復活のチャンスと見ています。

2.今後の課題

  発展の方向はどこにあるか。私は60年にわたり人権委員会が世界の知恵を集めて磨いて作ってきた決議、決定、そのバックレポートを新しい人権理事会のもとで、徹底的に活用することにあると思います。もちろん決議、決定だけでなく、引き継ぐというすべてを活用して、それを前進させるのです。私は今春の最後の人権委員会のとき、最近5年間の決議、決定を一覧表と一覧図にまとめました。約210件名あります。これを壁に貼って、気になることは決議、決定の本文に立ち返って読むようにしています。私は今度の人権理事会での発言で、憲法9条とともに、人権委員会決議2006/56「すべての人による、すべての人権の全面的享受のための死活的必要としての平和の促進」の一項を引用しました。これは国連の文書の中で、最も憲法9条に近いと思いますが、それでも憲法9条にはおよびません。この二つの引用を中心とすることで、私の憲法9条発言を構成することができました。次はもっと改善した発言にしたいと思います。
 たくさん紹介したいステートメントがありましたが、できませんでした。別の機会に譲りたいと思います。(ジュネーブからの報告:2006.7.17 第 16報、最終号より)


資料:  第1回人権理事会の決議、決定、議長声明の和英一覧表

第1回人権理事会によって採択された決議(5)・決定(7)・議長声明(2)(会期2006年6月19日〜6月30日)および特別会期人権理事会決議(1)(会期2006年6月5日〜6月6日)

Resolution : 決議
2006/1

International Convention for the Promotion of All Persons from Enforced
Disappearance:強制的失踪からのすべての人々の保護のための国際条約(無投票 で採択)

2006/2

Working group of the Commission on Human Rights to elaborate a draft declaration in accordance with paragraph 5 of the General assembly resolution 49/214 of 23 December 1994 : 1994年12月23日の総会決議49/214のパラグラフ5に従って宣言案を推敲するための人権委員会の作業部会(United Nations Declaration on the rights of Indigenous Peoples 先住民の権利に関する国連宣言)、(点呼投票にて採択、賛成30、反対2、棄権12、欠席3)、日本は賛成。

2006/3

Open-ended Working Group on an optional protocol to the International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights : 経済的、社会的および 文化的権利に関する国際規約の選択議定書についての公開作業部会(合意で採択)

2006/4 The right to development : 開発の権利(無投票で採択)
2006/5

The Intergovernmental Working Group on the Effective Implementation of Durban Declaration and Programme of Action : ダーバン宣言と行動計画の効果的履行に関する政府間作業部会(無投票で採択)

   
Decision : 決定
2006/101 Titles of officers役職(無投票で決定)
2006/102 Extension by the Human Rights Council of all mandates, mechanisms, functions and responsibilities of the Commission on Human Rights : 人権委員会のすべての委任、機構、機能および責任の人権理事会による延長(無投票で採択)
2006/103 The Universal Periodic Review : 普遍的定期審査(無投票で採択)
2006/104

Implementation of paragraph 6 of General Assembly resolution 60/251 :総会決議60/251の第6パラグラフの履行(無投票で採択)

2006/105 Draft framework for a programme of work of the Human Rights Council for the first year :1年間の人権理事会の作業のプログラムにたいする枠組み案(無投票で採択)
2006/106 Human rights situation in Palestine and other occupied Arab territories :パレスチナおよびその他の被占領アラブ地域の人権状況(記録投票で採択、賛成29、反対12、棄権5)、日本は反対。
2006/107

Incitement to racial and religious hatred and the promotion of tolerance :人種的および宗教的憎しみへの誘因と寛容の促進(記録投票で採択、賛成33、反対12、棄権1)、日本は反対。

   
Statement by President:議長声明
2006/PRST.1

The entry into force of the Optional Protocol to the Conventions Against Torture and Other Cuel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment : 拷問およびその他の残虐な、非人間的ないし品位をおとしめる待遇や処罰に反対する条約の選択議定書の発効

2006/PRST.2 Hostage-Taking : 人質を取ること
   
Resolution :決議
S-1/Res.1

Human rights situations in the Occupied Palestinian Territory :
被占領パレスチナ地域の人権状況(記録投票で採択、賛成29、反対11、棄権5)

   

▼第1回国連人権理事会での3分間発言内容(2006.6.26)
発言者:塩川頼男

議長、ありがとうございます。
 私は国際民主法律家協会を代表して、日本国憲法第9条の状況について発言します。
人権委員会決議2005/56は「平和の維持とその促進は、国の政策が戦争の脅威、特に核戦争の脅威の撤廃、国際関係における武力の使用または使用の脅威の放棄、国連憲章を基調にした平和的手段による国際的紛争の解決に向けられることを要求していることを強調」しています。
 日本国憲法第9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」といっています。
 国際民主法律家協会は2005年6月11日にパリで行われたその第16回大会において、世界の平和と安全を損なう、いかなる日本国憲法第9条の変更をも止めるべきという決議を採択しました。
 日本における日本国憲法第9条の状況は、すべての人による、すべての人権の全面的享受のための死活的必要としての平和に関連して、観察されなければなりません。
議長、ありがとうございました。

 
【今後の人権理事会の日程】
*最終の人権小委員会が7月31日(月)から開催され、会期は4週間以内で、会期は人
権小委員会自身が決めることになっている。
*人権理事会の1年の日程
第2回2006年9月18日〜10月6日(3週間)
第3回2006年11月27日〜12月8日(2週間)
第4回2007年3月12日〜4月6日(4週間)


人権理事会1年間の作業プログラムの枠組み案
(2006/105 Draft framework for a programme of work of the Human Rights Council for the first year)
この間の移行の性格を考慮して、次の案を無投票で採択を決定した。
 
■第2回 2006年9月(3週間)9月18日〜10月6日


1.機構および委任の報告書
特別手続きの報告書/相互対話(順番に、非選択的に、順序/グルーピングを決定する。)
人権委員会によって要請された事務局、高等弁務官、OHCHRまたは事務総長によって準備された報告書、研究および文書。
小委員会の報告書/1503手続きの報告書

2.見直しおよび制度構築
会期内機構の進行報告書
・普遍的定期審査Universal Periodic Review(UPR)・委任、機構、機能および責任の見直し

3.その他の実質的事項
人権高等弁務官による最新化、もし可能なら、会期の最低15日前に、事務局を通じて代表団によって通報される発議/事項/決定/決議を含む人権の促進と保護に関連するその他の事項

 
■第3回 2006年12月(2週間)11月27日〜12月8日


2.見直しおよび制度構築
会期内機構に関する進行報告書および更なる討論または決定
・普遍的定期審査Universal Periodic Review(UPR)
・委任、機構、機能および責任の見直し/作業方法/議事日程

3.その他の実質的事項
人権高等弁務官による最新化/もし可能なら、会期の最低15日前に、事務局を通じて代表団によって通報される発議/事項/決定/決議を含む人権の促進と保護に関連するその他の事項

 
■第4回 2007年3月〜4月(4週間)3月12日〜4月6日

1.機構および委任の報告書
特別手続きの新しい報告/相互対話(順番に、非選択的に決定される報告書の順序/グルーピング)

2.見直しおよび制度構築
・普遍的定期審査Universal Periodic Review(UPR)の決定
・委任、機構、機能および責任の見直しの決定 /作業方法/議事日程

3.その他の実質的事項
・人権高等弁務官による年次報告書/・報告に関する高等弁務官との相互対話

  もし可能なら、会期の最低15日前に、事務局を通じて代表団によって通報される発議/事項/決定/決議を含む人権の促進と保護に関連するその他の事項
 


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