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特集:WPF世界平和フォーラム

 今回の世界平和フォーラムの運営に当たられたピースボートの川崎哲氏から、会議開催中、7回にわたり現地から速報が寄せられた。その中から、いくつかの分科会に関する第3報を転載させていただき、ご紹介します。


第3報(現地時間6月25日午後7時)
▼ 課題をつなぎ合わせて
川崎 哲(ピースボート

 WPFは会議というよりは祭典だ。今日から実質的なワークショップがスタートしたが、一日の報告を書こうにも、あまりにワークショップの数が多すぎて一つ一つについて書くことはできない(そもそも全部に参加することもできない)。そして、一つ一つのワークショップで議論が深まるというよりも、「平和」に関するありとあらゆる課題をとにかく列挙して、その課題リストを数千人が共有することにこのWPFの最大の意義があるのだろうと、一日を通じて感じた。 なかでも、環境や経済の問題に取り組んでいる団体と反戦や軍縮に取り組んでいる団体とが結びつくことが重要だと指摘する声が、広い会場のあちらこちらで聞かれた。
 今日UBCで行われた主要プログラムは、次の通りだ。

■アジア地域会議(1日)
 地元の日本人や中国人グループが中心になり企画した。朝・夕1回ずつの全体会と10本のワークショップ(分科会)が同時並行で1日がかりで開催された。ワークショップのテーマとしては、東北アジア非核地帯、東北アジアの和解と平和、米事基地、インド・パキスタン、カナダ鉱業の社会的責任、ヒロシマ・ナガサキ、アジア系カナダ人への補償問題、人種差別、戦争責任などが取り上げられた。

■国際平和のための国連の機能強化(午前)
■ユース・デイ(1日)
■戦争の根源(1日)・・・途上国の視点からの戦争の経済的影響、女性の役割など
■ラテンアメリカ会議(1日)
■労働者平和フォーラム(午後)

 その中で、印象的だったものを紹介しよう。

1.東北アジア非核地帯「地域安全保障なくして非核化なし」

 アジア地域会議ワークショップ(A)「東北アジア非核地帯」では、東北アジア安全保障の専門家であるウェイド・ハントレー氏(シモンズ軍縮不拡散研究財団)が、朝鮮半島の核危機の現状と解決への課題を語った。氏は、北朝鮮によるプルトニウムなどの核物質の蓄積の危険性、それらの核物質が他国に拡散する危険性を強調した。そしてその関連で、日本の核燃料サイクル推進が地域の核問題を複雑化していることを指摘し、日本市民の役割を強調した。また、北朝鮮が核不拡散条約(NPT)を脱退したことで、他の国が同様のことをする危険性がある共に、米国が北朝鮮の違反のみを指摘して自らの軍縮義務を棚上げにする口実をつくっていることを指摘した。「NPT体制が浸食されていく」ことの危険を強調した。

 氏はさらに、6カ国協議の意義に触れた。昨年9月19日の6カ国共同声明の後交渉は停滞している。しかしより長期的に見た場合、6カ国が共同声明を出したということ自体が、地域安全保障問題全体にとってプラスであったと指摘した。「北朝鮮の核問題は、核問題としてだけ解決することはできない。10年前であれば可能であったかもしれないが、今では無理だ。核問題の解決のためには、より広い意味での地域全体の安全保障問題を改善していかなければならない。」

2.アボリション2000「国際持続可能エネルギー機関」

 核廃絶NGOネットワーク「アボリション2000」の年次総会(2日目)は、約40名で今年から来年にかけての運動戦略を討議した。参加者からは数多くの行動提案が出された。その中でも、「核エネルギーから段階的に脱却し、国際持続可能エネルギー機関(ISEA)を設立するためのキャンペーン」を立ち上げる提案がなされた。1995年のアボリション2000設立声明にもISEAの設立はうたわれていたが、この提案をさらに活性化させキャンペーンにつなげていこうというものだ。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ氏がノーベル平和賞を受賞し、ハンス・ブリクスの大量破壊兵器委員会の勧告が注目される中で、彼らの核兵器廃絶への提言を評価しながらも「核エネルギーからの脱却」という根本問題が触れられていないことへの苛立ちが多くの活動家から出された。

  この提案をめぐっては、核兵器廃絶運動と原子力からの脱却をめざす運動は別個のものとすべきだという声がフランスの団体から上がり、議論は紛糾した。しかし、ネットワーク内の一つのキャンペーンとして展開していく(すべての団体を拘束するものではないという前提)ことが可決された。軍縮の運動と環境の運動とのつながりという課題が浮き彫りになった。

  また、アボリション2000の総会にはアメリカ大統領候補のデニス・クシニチ氏(民主)も訪れた。平和省創設運動で知られるクシニチ氏は、米議会内で「すべての核兵器の廃絶」を訴える決議案を提出準備していることを紹介し、参加者を勇気づけた。

3.労働者の平和運動と憲法9条

 労働組合による平和フォーラムは、「戦争の経済と平和の経済−−軍事主義に対するオルタナティブ:平和的で持続可能な、経済を作り上げ、軍事を転換する」との題で開催された。パネリストの一人のアントニア・ジュハス(政策研究所(IPS)、ワシントン)は、米国のイラク攻撃を新自由主義経済政策との関連でとらえるべきだとの問題提起を行った。軍事介入の後の復興プロセスで大企業による支配がイラクにも適用されていっており、イラク攻撃で脅された周辺の中東諸国は米国との自由貿易協定を結ぶようになってきている。これにより、中東諸国の経済は打撃を受けている。氏は、軍事攻撃を阻止する平和運動と新自由主義経済政策の問題と一つのものとして運動を構築しなければならない、ととりわけ労働組合の役割を強調しながら語った。

 そして、カナダがアフガンに派兵している問題が取り上げられ、こうした派兵を止めるために労働運動が平和運動の一環になるべきだとの呼びかけがあった。
この会議の最後にピースボート・スタッフのグティエレス一郎は、「日本の憲法9条は戦後アメリカによって書かれたものであるが、それによってアフガンやイラク派兵が簡単にはできなくないという大きな役割を果たしている。日本では右翼勢力が9条を変えようとしているが、私たちはこれを守るために活動している。さらには、もともとアメリカによって書かされたこの憲法をアメリカに輸出し、アメリカの憲法に9条を入れていきたいと考えている。さらにカナダ、イギリス、スペイイン、オーストラリアなど、アフガンやイラクに派兵した国々にこうした憲法条項を書かせていきたい」と力強く述べ、満場の喝采を受けた。

   ちなみに明日は「憲法9条ワークショップ」が午後に開催される(ピースボート、ハーグ平和アピール、バンクーバー9条の会、原水協、原水禁、被団協の6団体共催)。この宣伝もかねてグリーンの9条Tシャツを着た日本人弁護士グループが大活躍だ。日本国際法律家協会の笹本潤事務局長は、西海岸の強い日差しの下9条の世界的意義を訴えるビラを配りまくって真っ赤に焼けた。


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