日本国際法律家協会は人権,民主主義,平和,環境などを通して法律家の国際的な連帯を求める活動を行なっています。
 
 
 

声明
 
一連の中国戦後補償裁判の最高裁判決について
日本国際法律家協会(JALISA)の声明


 2007年4月27日、最高裁判所は、中国人戦後補償訴訟2件(西松建設訴訟および「慰安婦」第2次訴訟)について、1972年の日中共同声明で裁判上の個人請求権は放棄されたとして原告側敗訴の判決を出した。

 最高裁判決は、日中共同声明について、戦争の遂行中に生じたすべての請求権を相互に放棄したサンフランシスコ平和条約の枠組みと異なる取り決めがされたとはできないとした上で、日中共同声明5項はサンフランシスコ平和条約と同様に、個人の損害賠償などの請求権をも含めたすべての請求権を放棄する旨を定めたと判示した。
  しかし、そもそも民間の個人の賠償請求権を国家が放棄することは法理論上できないこと、むしろ個人の請求権を認めることは戦争の抑止につながる大きな効果があることを考慮すると、最高裁判所のかかる判断はとうてい許されるものではない。

 今回の最高裁判決は、1990年代から始まったアジア太平洋戦争の被害者に対する戦後補償訴訟全体の帰趨に影響するおそれがあり、正義と公平の見地から適正な判断を求められている司法の役割を投げ捨てたものと言わざるを得ない、誠に不当な判断である。
  とはいえ、政府、加害企業は、速やかに被害者救済に向けた真摯な取り組みを始めるべきである。本件最高裁判決も、本件戦後補償に関わる問題について、政府、加害企業が任意に解決に向けた努力をすることを促しているのである。

 日本国際法律家協会は、今回の最高裁判決の背景には、「慰安婦」が強制によるという証拠はないという安倍首相の発言や、小泉首相時の靖国参拝など、日本の政府や政治指導者ならびに裁判所の上層部に、歴史に対する無反省な態度があることを憂慮し、正しい歴史認識の普及に努め、アフガニスタンやイラクでの戦争を早期に終結させ、東アジアを再び戦場とさせないために法律家・市民の連帯を強め、日本国憲法9条の改定を許さない運動をいっそう発展させるために尽力する所存である。


2007年5月7日
日本国際法律家協会理事会


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