日本国際法律家協会は人権,民主主義,平和,環境などを通して法律家の国際的な連帯を求める活動を行なっています。
 
 
 

IADLハノイ大会資料
 
国際民主法律家協会
ハノイ宣言
 
2009年6月10日

 国際民主法律家協会(International Association of Democratic Lawyers = IADL)の第17回大会がハノイにおいて開催された。そのテーマは「グローバル化の中の法と法律家:平和、発展、司法の独立のために」である。これは活気のある公開討論の場であり、世界中の法律家が集い、国際連合憲章の諸原則の完全な実施に向けた相互理解と協力を目的としている。

 ともにわれわれは、平和な世界のために活動するという誓約を再確認し、戦争、紛争、抑圧、貧困、飢餓のない世界、正義、平等と人間の尊厳に対する十全な尊重がある世界のために活動する誓約を再確認する。われわれは、少数者の利益ではなく、すべての人々の利益に根ざした正しい国際経済秩序の創設を支持することを繰り返し表明する。

 われわれは、現下の経済秩序が持続し得ないものであって、しかも不公平なものであることを明らさまにした世界金融危機の時期に、際会した。世界中で何百万人もの労働者とその家族が職と収入を失い、その先には、貧困、飢餓、強制移住などの社会悪が待ちかまえている。われわれは、清潔で健康な環境を求める人間の権利を含む、完全な社会的、経済的、文化的権利に対する人々のまっとうな熱望を完全に満たすために、連帯と協力のうちに行動することを誓約する。

 われわれは、力強く独立の経済を発展させる国家が生まれるのを期待し、その誕生を歓迎し、独立した経済的政治的発展への自らの道を追求している人や国の間において、独立の精神が育つことによってわれわれは力づけられる。

 われわれは、民主的な法律家として、不正や圧制と闘う人々とともに立つ。われわれは、国際法の根本原則に従って、自決権のために闘う権利を擁護し、搾取や侵略や外国による占領に反対して闘う権利を擁護する。

 ハノイ大会には、次のような優先課題があった。

1.世界の平和と安全
  人類が生き残るなら、なんとしても戦争法に代えて、平和の法をつくるべきである。侵略戦争は犯罪であり、国際紛争を解決する手段ではない。ハノイ大会は、国際関係において法の支配が重要であることを繰り返し確認した。われわれは、天然資源の利用における平等の原則を強く主張し、社会的産物と価値の利用もまったく同様に平等でなければならないと主張する。ハノイ大会は、平和の法典をつくることを呼びかける。武力紛争の終結を推進し、平和を規正するメカニズムをつくりあげ、紛争の平和的解決の手続きを改善し、国際紛争の予防と解決における交渉の役割を増大させ、柔軟かつ効果的な危機管理と危機解決のシステムをつくることが、この平和の法典の目的である。

 ハノイ大会は、日本の法律家が発議したグローバル9条キャンペーンを支持することを再度明確にし、すべての法律家がそれぞれ国において、日本国憲法の戦争放棄条項をその国で実施するように行動するよう求める。

2.反テロリズム立法
  IADLに結集した多くの国の法律家は、いわゆる「テロとの戦争」が基本的な民主的自由を著しく浸食し、拷問や裁判手続きによらない処刑を奨励・容認し、起訴も裁判もなく長期間勾留する実務を容認し、実質的な少数者の集団に属しているということだけでこれを犯罪者とみなし、まったく平和的で遵法的な団体のメンバーであっても民事的な能力を奪う制度を押しつけている。テロと戦うという美名のもとに、多くの法域において弾圧的的な法がつくられ、言論集会の自由が萎縮させられている。

 IADLに加盟する協会は、このような法制を押し戻すための法的戦闘において最前線に立ってきた。われわれは、いくつかの重要な訴訟事件の勝利に寄与してきたが、ここ8年間における弾圧立法と反動的な言辞の悪しき影響から少数派のコミュニティなどを守るために、なすべきことはまだ多い。

3.国際犯罪に対する責任
  われわれは、国際犯罪の不処罰に断固として反対し、戦争犯罪者に公的な責任を認めさせることがますます重要になっていることを強調したい。ルワンダや旧ユーゴスラビアに関する特別刑事裁判所は、国際法による正義の要求する水準と比べると、独立的とも公平とも言えないことが明らかになってきた。国際刑事裁判所の経験は、北半球の大国が平和に対する罪を行っても、これを訴追しないというバイアスを示し、アフリカ大陸だけに異常な執着を示している。他方、ローマ規程には、侵略犯罪に対する裁判管轄を規定することができなかった。

 IADLは、国際人道法の違反に対する普遍的管轄の原則を支持し、合衆国やイスラエルが、同国民が戦争犯罪をした場合にその告訴を受け付けた裁判所のある国に対して、不法な圧力を加えてきたことについて、断固として非難するものである。普遍的管轄によれば、すべての国際犯罪は独立かつ公平に、そして抑圧を恐れることなく、捜査されなければならない。

 ベトナムに参集したすべての代表団は、枯れ葉剤エージェント・オレンジの化学兵器の被害者に対して、心から強く懸念を表明し、枯れ葉剤被害者を支援する公的良心の国際法廷が、最近IADLの主催で、判決を下し、合衆国政府およびこの死の兵器・環境破壊の化学兵器を製造した企業が完全な補償と賠償を支払うべきだとしたことを実施するよう、繰り返し要求する。

4.グローバル化と経済・社会・文化的権利
  すでに述べたように、ハノイ大会は、経済危機の最中に開かれた。この経済危機は、豊かな先進国による野放図な貪欲さと無責任で誤った金融管理がもたらせたものである。この危機は、工業国の貧しい人たちやマージナルな立場に追いやられた人々も、発展途上国の人々にも、ひどく偏った生命をも脅かす影響を与えた。多くの発展途上国は、負債でがんじがらめになって身動きがとれなくなり、その多くは、国際金融機関が課した不合理な条件の結果である。

 労働者の権利は、労働組合に対する企業の敵視政策によってかねてより攻撃されてきたが、労働規制の緩和と安価な移民労働者の導入政策によってますます危険にさらされ、ひいては、労働者の甚だしい搾取をもたらせ、その家庭生活を破壊し社会構造をゆるがせるようになっている。そのような政策はまた、多文化主義という目標にもきわめて大きな悪影響をもたらし、人種差別を生み、民族集団や社会集団の間に敵対的な関係を増幅させている。

 女性は二重の搾取の犠牲者であり、女性のエンパワメントという死活的な重要性を持つ要求は、ますます脅威にさらされている。安価な労働力として子どもを非人道的に扱うことは、国際的にあってはならないスキャンダルであって、われわれは、女性と子どもの搾取に反対し、労働組合を通じて労働者が団結する権利があることを求める闘いを強化するというIADLの決意を繰り返し確認するものである。

 ハノイ大会は、人間の尊厳、健康、幸福を追求し、貧困、飢餓、ホームレス状態に反対する闘いを変わらず支持することを誓約する。自然災害に取り組むことを助け、貧しい発展途上国の人々だけが苦しめられる伝染病や病気を予防することにつながる。

5.開発と環境権
  ハノイ大会は、清潔で健康な環境に対する人間の権利を支持することを宣言し、この権利が国際法や地域国際法や協定、国内法などに盛り込まれるよう求める。われわれは、気候変動を阻止する闘いにおいてより親密な結束を築くために力を合わせ、第2の京都議定書を支持して、地域においても、国際的にも活動することを誓う。法律家として、われわれは、国家、企業または個人が人類と環境に対して引き起こす損害を補償する新たな効果的かつ迅速な法的手段を見つけ出す特別の責任があることを認める。

 われわれはまた、2009年12月に開催される国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の重要な活動に対する支持を表明し、地球上のあらゆる生命体に決定的な影響を与えるこの問題について、国際的な政策をつくり実施するのにあたって、NGOその他の市民社会(市民団体)代表者の専門知識と助言にいっそう重きを置くよう求める。

6.司法の独立
  ハノイ大会は、法律家と司法権の独立が世界の多くの地域においていっそう脅威にさらされていることに留意した。法律家と人権活動家は、人民の権利を擁護したというだけで、脅迫を受け、投獄され、暴力を受け、殺人部隊によって殺されることもある。IADLは、弁護士と裁判官の保護センターを設立し、報告書を刊行し、連帯と監視活動を組織して、活動を強化するものである。

 ハノイ大会は、世界中の法律家に対して、司法の独立を確保し、法的手続きの進歩的な諸原則を実施し、特に貧困層や僻地の少数民族、子ども、女性、障害をもつ人々など、恵まれない人たちが司法にアクセスできるように改め、さらにこれを強化するよう求めるものである。

 平和の都市ハノイにおいて、われわれは、「平和に使える法」というIADLのモットーの下に、以上の目的のすべてのため、絶えることなく、闘うことに専心するものである。




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